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ローボールテクニック

最初に好条件を提示し、承諾を得てから、あとで都合の悪い条件を付け加えたり、好条件の一部を取り除いたりする心理テクニックのことを『ローボールテクニック』と言います。

「ローボールテクニック」の名称は、「相手が受け取りやすい低いボール(low ball)から投げること」に由来しています。

一度承諾したら相手は断りにくくなりますよね? 一度決心した行動や発言、信念などを貫き通したいという心理 『一貫性の原理』 をうまく利用したのが、ローボールテクニックなのです。

「あの人、言ってることがコロコロ変わるなぁ」とは、誰も思われたくないですよね。人は無意識のうちに、自分の行動や態度に、一貫性を持たせようとします。

『フット・イン・ザ・ドア』『ドア・イン・ザ・フェイス』と合わせて、3大交渉テクニックと言われています。

A「この時計10万円するんだけど、いらないから5万円で売ってあげるよ。新品やで」
B「えっほんまに! ありがとう! はい、5万円!」
A「まいどあり! あっでも電池は取り替えないと使えないからちょっと高いけど買ってね。あと保証書はないから修理する時もお金かかるよ」
B「えっ、、、あ・・・うん(まぁいいか)」

先に電池交換が必要であること・保証書がないことを伝えてしまうと断られてしまうかもしれません。なので、後で説明することで「まぁいいか」と思ってもらい、交渉を成立させてしまうのです。

ただし、このローボールテクニックは気を付けないと相手との信頼関係を壊してしまいます。

詐欺師もよく使う心理テクニックなので覚えておくと、自分の身を守ることにも活用することができるでしょう。

【フット・イン・ザ・ドア】

「ローボールテクニック」と類似した交渉術のひとつに「フットインザドア(段階的要請法)」があります。

フットインザドアは、はじめに「ハードルの低い提案」を承諾させてから、徐々に「ハードルの高い大きな提案」を要求する交渉術です。

「ローボールテクニック」と同じく、「一度契約すると次の提案も断りにくい」という一貫性の原理が応用されています。

【ドア・イン・ザ・フェイス】

「ドアインザフェイス」も、ローボールテクニックと混同されやすいものです。

ドアインザフェイスとは、フットインザフェイスと反対に、最初に本来の目的よりハードルの高い頼みごとをして、それが断られた後にハードルを下げた頼みごとをして本来の目的を達成する交渉術です。

ドアインザフェイスは一貫性の原理を用いた交渉術ではなく、相手の「一度頼みごとを断ってしまった」という負い目につけこんで承諾を得る方法です。

「ローボールテクニック」と『フットインザドア』、『ドアインザフェイス』の大きな違いは、要望が変化する2つの手法に比べて、「ローボールテクニック」の要望は一貫しているものの、条件の一部を隠しているという点です。

◆「ローボールテクニック」の実証実験

アリゾナ州立大学のロバート・チャルディーニ名誉教授が、63人の学生に対して行った実験を紹介します。

実験の内容は、

【ローボールテクニックを使って実験の参加者を募った場合】と、【ローボールテクニックを使わずに実験の参加者を募った場合】の参加に承諾する確率を比較するというものです。

条件A:【ローボールテクニックを使わない】

最初から「朝の7時に開始する実験に協力してくれるかどうか」を尋ねる

条件B:【ローボールテクニックを使う】

まず、「実験に協力してくれるかどうか」を尋ね、承諾された後に「実験は朝の7時から開始する」ということを伝えて、もう一度参加の有無を尋ねる

実験の結果は、条件Aの実験の承諾率は31%だったのに対して、条件Bの承諾率は約2倍の56%となりました。

このことから、「ローボールテクニック」を使えば、普通に頼めば断られるような依頼であっても、一度相手の承諾を引き出すことが出来れば、最終的に2倍近い承諾率を引き出せる可能性があることがわかりました。

◆「ローボールテクニック」の具体例

「ローボールテクニック」の具体例を紹介します。

・買い物中に「店内商品70%オフ開催中」という宣伝につられて服屋に入ってみたら、レジで「大変申し訳ないのですが、この商品は割引対象外です。よろしいでしょうか?」と言われ、レジまで持って行っしまったため、断りづらくそのまま商品を購入してしまう。

・「飲み放題1000円」という張り紙をみて、居酒屋に入ったら、着座後に1人2オーダー制、お通し料、サービス料などの説明を受け、他のお店にするとは言いづらくて、結局そのまま居てしまう。

・営業マンに「こちらの商品は、業界最安値です」と紹介され、「それだったら購入します」と返事をしたら、「この商品は、こちらの商品と合わせてお使いいただく方が、効果を最大限に発揮できます」と言われ、一度買うと言ってしまった手前、両方購入する流れになってしまう。

・「今度、友達も含めて3人で飲みに行こうよ」と誘われ、「はい、大丈夫です」と答えたが、飲み会の当日、「今日友達急に来れなくなっちゃったんだけど、2人でも大丈夫かな?」と聞かれ、一度行けると言ってしまったので、断りづらく行く流れになる。

◆「ローボールテクニック」の注意点

ローボールテクニックはビジネスや恋愛に限らず日常のあらゆる場面で活用できる有効な交渉術ですが、不利な条件を隠して交渉するため、相手からすると「嘘をつかれた」「騙された」と不信感を抱かせる危険性があるかもしれません。そのため、相手から信頼を失ってしまう可能性があります。

ローボールテクニックは「意図せずになってしまった」という場合を除いては、リスクが高いので、基本的にはローボールテクニックは使用せず、その「対処法」を把握しておくことをお勧めします。

◆「ローボールテクニック」の対処法

ローボールテクニックの一番の対処法は、「ローボールテクニックという交渉術がある」ということを知っておくことです。ローボールテクニックを知っておくことで、もし使われてしまった場合に見破ることができます。

ローボールテクニックは、交渉で活用するためではなく、自分が不利な条件を吞まされないために身につけておく必要があります。相手がローボールテクニックを用いることが分かれば、相手に流されににくくなり、合理的に判断できるでしょう。

交渉の場で何かを判断するときは、「○○という条件で間違いありませんか?それ以外の条件は他にありませんか?」と先に全ての条件を確認しておきましょう。

また、「一度承諾したから、断りづらいな…」「申し訳ない…」「もったいない…」という感情は捨てるようにしましょう。人は、「承認欲求」という嫌われたくないという欲求を持っているため、このような感情を無視することは、難しいかもしれませんが、そのような場合は、「改めて考えます」と一旦家に持ち帰るようにしましょう。その方が、冷静な判断ができ、周りに相談することもできます。

「ローボールテクニック」は有効な交渉術ですが、使い方によっては詐欺になり、相手との信頼関係を壊す可能性がある危険な手法です。もしローボールテクニックをどうしても使いたい場合は、謝罪してから条件を変えることが大切です。

まずは、ローボールテクニックという交渉術があることを頭に入れ、自分が利用されたときには冷静な判断を心がけましょう。

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