コンコルド効果(サンクコスト効果)
今まで投資したもの(金銭、時間、努力・苦労など)が無駄になるからと、そのまま続けても損失にしかならないのが解っているのに、やめたくてもやめられない心理状態のことを『コンコルド効果(サンクコスト効果)』と言います。
先入観や思い込みから判断が歪められてしまうことを『認知バイアス』と言いますが、コンコルド効果もその認知バイアスの一つです。
簡単に言えば、「もったいない・・・」という気持ちが冷静な判断力を奪ってしまう心理状態を指します。
例えば、2000円払って観始めた映画が「つまらないな・・・」と開始5分で感じたとします。
「つまらない」と感じたのであれば、すぐに映画館を出れば別の楽しい時間を過ごせるわけですが、払った2000円がもったいないと感じてしまい、結局最後まで映画を観てしまう、といった心理状況になってしまうのです。
コンコルド効果はギャンブルでもよく起こりがちな現象です。
パチンコなどで負けがこんでいるにも関わらず、「元を取り返したい」「負け分だけでも取り返さないと」と意地になって続行した結果、最終的にとんでもない大損になってしまうというのはよくあることです。
このような状況に陥ったしまった場合、大切なことは過去を切り捨てることです。そのために必要なことはゼロベースで考えること。
「まだ何も投資をしていない段階だったらどうか」
と考えることで、コンコルド効果から抜け出すきっかけになります。
理解していてもなかなか抜け出せないのが、コンコルド効果がもたらす心理状況ですが、このような状況に陥らないためにもしっかり学んでおきましょう。
◆コンコルド効果の意味・由来
「コンコルド効果」は「コンコルド」という旅客機事業に由来しています。
コンコルドは、イギリスとフランスの共同事業として開発・運行されていた音速旅客機です。1969年に開発がはじめられたコンコルドは近未来的な性能や造形から、当時の人々の注目を集めました。
しかし、コンコルドの機体そのものの維持費が高く、航空会社は採算がとれず、1976年に製造は中止になりました。その後も商業的に成功する見込みがないまま運行を続け、2003年にようやく運行停止に至りました。
事業を続けても利益が見込めないにもかかわらず、それまでの大きな投資が無駄になることを惜しむ気持ちが、損失をさらに大きくしてしまいました。
「コンコルド効果」は経済学では「サンクコスト効果」と呼ばれます。「サンクコスト(埋没費用)」は、過去に支払ってしまいどのようなことをしても回収不可能となってしまったコストのことです。
「サンクコスト効果」は損失する可能性が高いとわかっていても、過去に投資したコストの価値を引きずってしまい、もったいないという気持ちが湧いてやめられなくなる心理状態のことをあらわします。
◆コンコルド効果の具体例
「コンコルド効果」は誰でも陥りそうなものですよね。特に「お金」と「時間」に大きく投資すればするほど、「コンコルド効果」は働きます。
いくつか具体例を紹介します。
・ギャンブル
パチンコは「コンコルド効果」の典型例ではないでしょうか。
たとえば、同じパチンコ台に3万円使ったとします。ここでやめれば、金銭的負担は3万円ですみます。しかし、「あともう少しやったら、この3万円を取り戻せるかもしれない」とさらに2万円使ってしまいます。結局1度も当たることなく、結果合計5万円使ってしまいました。
負けが続いているのに、「負けた分を取り戻さないと」と躍起になって続けてしまうと、結果的に大損になってしまうギャンブル依存に陥る人によくみられる現象です。
・ビジネス
新しい事業をスタートする時は、多額のお金が必要になります。しかし、始めた事業が上手くいかずに借金ばかりが膨らんでいき、事業の撤退を視野にいれなければならない状態なのに、「もう少しつづけていれば、収益を回収できる日が来るかもしれない」という考えになり、事業撤退の判断ができなくなってしまう。
・日常
クローゼットに洋服が多すぎて整理しようとしたときに「しばらく着ていないけど、この服高かったから、捨てるのはもったいないなぁ」と考えて、捨てるのを躊躇してしまうことってありますよね?
その服をずっと着ていなくて、収納スペースを圧迫してしまっている場合には「捨てる」判断が妥当です。整理されないという「損」があるにも関わらず、「いつか着るかもしれない」「洋服を買ったときに出したお金が無駄になる」ということを考え、捨てられない
・恋愛
全く脈がない相手に、いつまでも猛アプローチをし続けてしまう人もいます。もちろん「すごく好きだから」という想いもあるはずですが、今までアプローチし続けた労力やコストを考えると、「もう少し頑張ったら振り向いてもらえるかも」との望み・願いをこめてアプローチし続けてしまう。
また、長く付き合っている相手がいるとします。気持ち的には、もう付き合った頃のような気持ちはありません。別れたいなと思っていても、今までの付き合ってた期間やその期間の思いやお金などを考えると、このままでいようかなとズルズルと関係を続けてしまうこともあります。
◆マーケティングでの活用法
上記では「コンコルド効果(サンクコスト効果)」の具体例をいくつか紹介しましたが、ビジネスに応用することもできますので、紹介します。
・付録つきの月刊誌
付録つきの月刊誌で1年間毎月雑誌を購入し、付録のパーツを組み立てることで1つのプラモデルを完成させていく「パートワーク(分冊百科)」というものがありますよね。これも「コンコルド効果(サンクコスト効果)」を利用したマーケティングになります。
これは通常の創刊号だけ破格の価格設定することがポイントです。安さに惹かれて創刊号を購入した読者は、途中でプラモデル作りに飽きてしまっても、完成させないと今まで買ってきたものが「もったいない」「せっかくここまで作ってきたし最後まで続けよう」と長期的に購買行動を促すことで顧客離れを防ぐ効果があります。
・会員ランク
購入金額や継続期間に応じて会員をランク付けすることも、「コンコルド効果(サンクコスト効果)」を利用したマーケティング戦略になります。
たとえば、通販のサイトで「あと1万円使ったらゴールド会員になれる」「ゴールド会員になったらポイント率があがる」などと情報をあると、「ゴールド会員目指そう」と購買意欲も湧き、他の店舗ではなく、自店舗で購買してもらえるように促します。ランクに応じて、特典やメリットを提示することは重要です。さらにゴールド会員になったら、「せっかくゴールド会員になったから」「ゴールド会員を維持するために買い物はこのサイトだけにしよう」との心理が働きます。
・送料無料
通販サイトで「○○〇円以上のお買い上げで送料無料になります」という案内を見かけますよね?
「送料無料にするためにあと1点買わないと損するな」という心理が働き、購入点数を増やしてもらうことにつながります。
このように「コンコルド効果(サンクコスト効果)」は日常のあらゆるところで影響を及ぼしてします。「投資したお金がもったいない」「費やした時間がもったいない」という気持ちは誰にでも起きうるものです。
ポイントはターゲットに「もったいない」と感じてもらうことです。
この心理状態を刺激して、ターゲットの購買行動を促してみてはいかがでしょうか?
四季グループ代表
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